派手な展開とは? *グッド・フェローズのネタバレ注意

 先ほど「グッド・フェローズ」を観終わった。良かった。1ヶ月ほど観ようと思って放置していたものの、やっと再生した瞬間、開始2:15秒で映画から目が離せなくなった。ギャングとして登場する主人公。「昔からギャングになりたかった」ナレーションとは裏腹に、憔悴しきった主人公の表情がなんとも皮肉である。

 

 観賞後、余韻に浸りながらレビューを見てみる。

 「派手なメインエピソードに欠ける」

 ……おお?

 予想外の感想。

 レビューを俯瞰すると、おおよそ「リアリティがある、地味、淡々とことが進む、古臭い、テンポがいい」といったようなものが多い。

 確かにこの映画は、特筆すべき大きなイベントはなく、一つ一つの小さなエピソードを積み重ねながら大きな流れを構成している。前半は主人公がギャングに憧れる〜ギャングになって華やかな生活を送る。後半はFBIや警察に追われてハラハラするようなギャングの攻防も描かれている。

 この映画はほぼ実話をもとにしているらしい。リアリティがあると評判だが、自分は本物のギャングがどのような生活をしているかは見当がつかないので、リアリティに関して言及することはできない……しかし、確かに破綻している部分はないし、説得力もあるように思う。だからこそ「リアリティはあるが派手さにかける」という評価が出てくるのだろう。レビューというのは他の映画との相対的評価であるから「他のギャング映画と比べて地味である」と捉えることもできる。

 では「ギャング映画で、かつ派手な映画」とは一体なんだろう?

 

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 ここを参考にしつつ映画を挙げてみる。

 「スカーフェイス」は銃撃戦、ロマンス、最後のシーンなどから派手と呼べるかもしれない。
 「勝手にしやがれ」はもっと地味なのでは。
 「ゴッドファーザー」は…すいません見てません……。
 「ブラック・レイン」はアクションがメインと言えるかも。
 「パルプ・フィクション」も凝った構成で、エピソードが派手というよりかは画面構成、色彩、美術が派手な印象を受ける。
 同監督の「タクシードライバー」には多少あった気がする。最後のシーン。
 「007」「アウトレイジ」とか、ギャングっぽいし派手かも。
 「トレーニング・デイ」は派手なアクションはあまりない。
 (「アメリカの友人」ってギャング映画なの?)

 ざっとギャング映画を見てみると、派手さというのはアクションと美術が重要な要素を占めるのではないだろうか。

 では、グッド・フェローズはアクションと美術において地味だろうか。

 上記の映画くらいのアクション「行動」なら、正直「グッド・フェローズ」にもある。撃ちまくる抗争シーンというのはないが人を撃つシーンなら山ほど出てくる。ただアクションを重視してはいない。

 美術に関しては、派手というよりかはリアルさに重きが置かれていると感じた。ただ、画面としては決して地味ではない。バーや高そうな車、スーツなど、美術はギャングたちの身につけているものの豪華さや、ことによっては悪趣味さを際立たせている。陰湿な華やかさとでも言えばいいだろうか。

 こうして考えてみるとグッド・フェローズは派手な映画とは言い難いだろう。

 しかし、ここで違和感を感じる。なぜなら上記で挙げたギャング映画のキモはアクションがメインでない限り、「派手さ」ではないからだ。映画内では画面構成、カメラ回し、技巧、テンポが重視されており、銃撃シーンやアクションというのは、画面の豪華さを際立たせたり観客の注意を引き付けるために行っている。場面転換のスイッチの役割。

 こう考えると、グッド・フェローズにそのようなシーンは存在しなかったが、決して起承転結がない、場面転換がない、というわけではない。

 この映画は派手なシーンを必要としなかっただけだ。

 「派手さ」「見せ場」が撃ちまくり死にまくりの抗争のことを指すのであれば、正直B級映画には腐る程あって、「グッド・フェローズ」を見ようという動機にはならない気がする。大体のっけからギャングに対する皮肉が描かれているのに、それも理解できないとなるとレビューを書くような読解力があるとは思えない。美術に関しては派手ではないものの地味でもない。ギャング映画相応の豪華さを期待しているのならば、映画を見ればわかるけれども、十分及第点を超えている。

 このような理由からAmazonレビューをはじめとする「派手さがない(のがマイナスポイント)」という指摘は的を外していると言わざるを得ない。個人の感想であるといえばそれまでだが「派手さがない」というのはこの映画に対する批判たりえない。まず物語単体に派手さが必要かどうか考慮すべきだ。「他の映画と比べて派手さが足りない」と言いたいのならば他の映画を見ればいいだけで、この映画に文句はつけられない。そもそも映画レビューというのは作品に含まれた無駄な要素、加えなければならなかった要素を考慮するところから始めるべきだと思うが……。その上で他の映画と比較して類似点や劣っている部分・優っている部分を論じるべきだ。

 

 派手な展開とは、観客を興奮させ、楽しませ、画面に釘付けにさせる要素を持った場面のことだ。アクションシーン、銃撃シーン、その他ストーリーをひっくり返すような仕掛けが求められる。しかし、派手な展開なしで観客を楽しませられるのであれば必ずしも必要とはいえない。あくまで一つの機能、スイッチとして認識すべきだろう。

 

 

 (自分の好きな「クイズ・ショウ」や「太陽がいっぱい」なんかも地味で淡々とした映画って呼ばれてんだよな……自分が世間一般でそう呼ばれているような映画を好む傾向にある、ということは認める)